大阪出入国在留管理局（大阪市）の常勤女性医師が酒に酔った状態で収容者を診察していた問題で、斎藤健法相が、事案発覚後の2月下旬に事態を把握しながら公表していなかったことが分かった。

◆把握後も常勤医師の確保などアピール
　2日の衆院法務委員会で鎌田さゆり議員（立憲民主）の「いつ知ったのか」との質問に法相は「2月下旬に把握し必要な事実確認を行うよう指示した」と答えた。公表しなかった理由は「訴訟を前提に対応する必要があり、事実確認に時間がかかっている」と述べた。
　この間、法相は4月19日の衆院法務委で「常勤医師の確保等の医療体制の強化や職員の意識改革の促進などが表れている」など入管改革をアピールしていた。野党や外国人支援者らからは「法改正のために、報告を遅らせていたのではないか」と批判が上がっている。
　また、2日は野党の国会議員らが大阪入管に対するヒアリングを行った。立民、社民、れいわ新選組の現職と共産前職の計6人が参加した。入管側は、医師はアルコールが検知された1月20日以降業務から外れているが常勤医の雇用を続け、給与も支給され、処分もしていないと説明した。
　入管庁は入管難民法改正案の審議が始まった4月、「改善策の取組状況」として報告書を発表。「常勤医確保で、被収容者に関する継続的な体調把握や相談が容易に」「大阪に常勤医師1人（令和4年7月）」などの施策を盛り込んだ。4月19日の衆院法務委で斎藤法相は「（名古屋出入国在留管理局でのスリランカ人女性の死亡事件を受け）改革の効果が着実に表れてきていると思います」と述べていた。（望月衣塑子）

東京新聞
2023年6月3日 22時24分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/254511